相続と保証債務の話
相続とは不動産や預貯金などの財産を、被相続人(お亡くなりになった方)から引き継ぐものと考えられている方がおられます。確かにその通りなのですが、「マイナス財産」即ち借金なども同じように相続してしまうのです。
被相続人の資産よりも借金等の方が多い場合、「相続放棄」という手続きがあります。原則、相続開始後3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる手続きですが、この不況の中,相続放棄の手続きをされる方が多くなっています。この中で一番問題になると思われるのが、被相続人が保証人などになっていた場合です。相続開始即ち、お亡くなりになった時点では主債務者(お金を借りた人)が滞りなく支払をしていれば、保証債務は顕在化しておりません。従って相続人もそのような保証債務があることを知らないことが多いのです。
例えば、平成18年にAさんがお亡くなりになりました。相続人のB、C、DさんはAさんに別段の資産、債務もないと思っていたため、単純相続してしまいました。その後、5年も経った平成23年、主債務者が破産し、保証人になっていたAさんの相続人のB、C、Dさんに対し、債権者から数千万円もの保証債務の履行請求がされるケースがあるのです。
Aさんの相続人B、C、Dさんは、幸いAさんにそのような債務が存在することを知らなかったと言うことと、相続した資産が何もなかったと言うことで、相続放棄が受理されました。後は相続放棄の有効無効が債権者と争われるものと考えられます。
しかしながら、もし、Aさんに不動産等何らかの資産があり、その相続登記をし、不動産を売却してしまっていたら、どうでしょう?
保証人になると言うことは、その時は問題ないかも知れませんが、後々非常に問題になるケースが多く、法改正を含め検討が急がれます。